ちょっといい話・・・

「流山人情警察署」・・・2010年7月号

 「流山人情警察署」
 つくばエクスプレスで秋葉原まで25分という距離にありながら、水と緑の豊かな自然を残している千葉県流山市。この町から1本のニュースが、国内のマスコミはもちろん、ニューヨークタイムズやCNNテレビにまで配信されたのは、先月のことです。迷子になったオウムの一種であるヨウムの「ヨウスケくん」が、自分の住所や名前をしゃべり、飼い主の元へ無事に帰ることができたという、あのなんともハッピーなニュースです。この「ヨウスケくん」を、最初に保護したのが流山警察署でした。流山署に「大きな鳥がいる。逃げたペットらしい」という通報があったのは、5月6日のことでした。署員が出かけて保護。インターネットで調べてみると、どうやらヨウムという高価な鳥らしいことが分かりました。近くの近藤動物病院へひとまず預かってもらい、次の対策を練っていた5月19日のこと。近藤動物病院から大変な知らせが飛び込んできました。「ヨウムがしゃべってます!自分の住所と名前を言ってるんです!」流山署が調べてみると、それは実在する住所であることが分かりました。こうして無事に、飼い主の中村さんのもとへ帰ったヨウスケくん。 この一件で、流山署にはいろんな動物が保護されていることが、世間に広く知られることになりました。通報があれば、迷子のイヌやネコはもちろんのこと、ニワトリ、ウサギ、フェレット、オウム、ハクビシン、カメ、さらには、カミツキガメ、小鳥にいたるまで、署員が駆けつけて保護してきました。市民が動物を持ち込むことも少なくありません。この場合にも、必ず受理することにしているというのが流山署です。署員のみなさんは当直から会計課まで一丸となり、エサの世話や掃除、朝夕の散歩などかいがいしく世話を続けます。珍しい動物で飼い方が分からない場合は、専門家を呼んでアドバイスを受けることもあります。制服姿の警察官が、犬を連れて署内の敷地を散歩する。こんな光景が、流山署では決して珍しいことではないのです。さて、市民が発見した動物を預かる際、必ず確認することがあります。それは「遺失物法で扱いますか?動物愛護法で扱いますか?」ということです。「遺失物法」で扱う場合は、警察署で2週間ほど保護します。「動物愛護法」で扱う場合は、動物愛護センターへ送られることになります。 平成18年度の場合、千葉県動物愛護センターで致死処分になった犬と猫の数は、犬が5924匹、猫が7985匹にのぼっています。「遺失物法でお願いします」という声が多くなるのは、当然のことでしょう。流山署はいつも、遺失物法で預かった動物がいっぱいです。たとえば犬は、今年に入ってすでに28匹を受理したといいます。2週間以内に飼い主が現れたケースは、このうち半分くらいです。あと半分は、愛護センターに送られて行きました。こんな流山署に、つい最近までオスとメス、2匹の柴犬が保護されていました。オスは4月28日、メスは5月6日に拾われてきたものです。インターネット上には「遺失物案内システム」で公開したものの、捨てられた犬なのか、飼い主はなかなか現れませんでした。そして、期限の2週間が過ぎたころ、唐鎌茂夫署長が、こんなことを言い出しました。「この犬たちは、私が自分の家で面倒をみよう・・・・」こうして署長は、自宅にしている官舎へ2匹を連れて帰りました。かつて、柴犬を飼っていたことがあるという署長は、情が移ったようです。例のヨウムの「ヨウスケくん」の報道があったのは、ちょうどそんなときでした。「ヨウスケくん」効果で、2匹の柴犬のことを知り、流山署を訪れた市民が、なんと13人!「ぜひ、うちで飼わせてください」と、里親志願してきたのです。中には、わざわざ岡山県からやってきた人もいるといいます。さらに「うちの犬じゃないかしら?」と訪ねて来た人が5人います。この中から、署長の面談を経て、2人の里親が決まりました。 オスを引き取ることになったのは、1年前に柴犬がいなくなった野田市の家族。探し続けているうちに「ヨウスケくん」の報道を知って「流山署にいる柴犬は、うちの犬かも知れない」とやって来ました。これまで別の犬を飼う気はなかったそうですが、「見たら似ているんです・・・・・」と、引き取ることを決めたといいます。メスの里親になったのは、流山市の小学6年生とその家族。長年飼っていた愛犬が死んで、次の犬を探していた小学生は、やはり「ヨウスケくん」のニュースで、流山署の柴犬のことを知り、神仏に手を合わせたり、署に通って犬をながめたりと、本気で引き取ることを願ってきました。そして、家族も賛成して里親に決定!こうして、2匹の柴犬はめでたく6月の5日、それぞれの里親に引き取られていきました。
流山署の唐鎌署長は、「正しく・強く・迅速に」の署訓と共に、署員に常々こう語っているそうです。「警察にとって大きな力となるのは、″地域との連携″です。市民の理解と協力です。たとえ動物一匹であっても、おろそかに扱っては市民の理解と協力は得られない」後日、この取材をさせていただいた上村伸二郎副署長から、番組あてに、お電話がありました。「昨日なんですが、またまた珍しい動物を保護したんですよ。夜の公園で、高校生の頭の上に乗っかってきた動物で、調べてみたらスローロリスという絶滅危惧種に指定されてるサルなんです」わざわざこんな情報まで教えてくれたことに恐縮するスタッフに、副署長は、ちょっと照れくさそうに笑いながら、おっしゃいました。「いやぁ?、決してヒマというわけじゃないんですけどね」
わたしのちょっと感動した本より・・・